転職

未経験から正社員の翻訳者に転職できた5つの理由

わたしは、26歳のときに公務員から翻訳者に転職しました。
翻訳以外の職種にはまったく興味がなかったので、もし行きたい翻訳会社に落ちてしまった場合は転職自体を諦める(つまり公務員を続ける)しかないと考えていました。
しかし、上司のパワハラで心身ともに限界だったため、事実上の選択肢は「翻訳者への転職を何としてでも成功させる」ことしかありませんでした。
その一方で、翻訳の経験がなく、他の専門分野の知識も皆無の自分を受け入れてくれる翻訳会社が果たして存在するのか、採用が決まるまではとても不安でした。

しかも、元々超安定志向のわたしにとって、正社員という条件はなるべく譲りたくないものでした。一応「安定」の代名詞的な職業である公務員の立場を捨てて、契約社員や派遣社員になったとしたら、きっと自分は後悔するだろうと思ったのです。今は、正社員も契約/派遣社員もアルバイトも、それぞれ一長一短だと考えていますが。

今回は、そんなわたしの転職活動を振り返り、「こんな理由でなんとか上手くいったのではないか」というポイントを挙げていきたいと思います。わたしと同様、「未経験で正社員の翻訳者に中途採用されたい」と考えている人の参考になれば嬉しいです。

TOEICのスコアがアピール材料になった

よく「TOEICのスコアが高くても、それだけでは就職・転職には有利にならない」という意見を聞きますよね。

でも、採用する立場である会社側の気持ちをちょっと想像してみてください。

英語を使う仕事に、英語での業務経験のない人が応募してきた場合、あなたが採用者だったらどんな基準で採用/不採用を判断しますか?

例えばどんなに専門知識が豊富でも、人柄が優れていても、その応募者がTOEIC500点だったらどうでしょう。実務経験がない以上、TOEICでもTOEFLでも英検でもなんでもよいのですが、英語に関する試験での成績にまずは注目するのが自然ではないでしょうか。

これを読んで「翻訳者になりたいならまずはTOEICを頑張って!」と言っていると誤解していただきたくはないのですが、確実に言えるのは、「TOEICなんて就職には意味がないよ」という周り(ネット)の声に惑わされて諦めてしまうのは勿体ないということです。

わたしが未経験から翻訳の仕事にありつけたのは、「TOEIC満点」というのが非常に大きかったのではないか、と考えています。だって、他にこれといったアピールポイントがなかったので。

「TOEICでも通用したのは、あなたが第二新卒(20代)だったからでは?」とおっしゃる方もいると思います。確かに未経験で専門知識もないのに受け入れていただけたのは、そういう要因もあったのかもしれません。しかし、会社は年齢も含めた「あなた」を見ているはずですので、年齢を理由に最初から応募しない…というのはやはり勿体ないと思います(仮に年齢だけで落とす会社があったとすれば、「その会社とは」縁がなかった、ということに尽きます)。

30代、40代であれば、20代にはない「経験」があるはずです。英語ではない分野の専門知識というのは、翻訳をする際にもものすごく役立ちます。

例えば医薬分野の翻訳をするのであれば、「TOEIC900点×専門知識ゼロの人」と「TOEIC700点×専門知識がある人」とを比べた場合、後者の翻訳のほうが質が高いということは普通にありえるんですよ。

ぜひ、自分の歩んできた道を存分にアピールして、転職活動に活かしてほしいなと思います。

転職先候補を徹底的にリサーチした

前の項目で「TOEICは就職には意味がないという意見を真に受けるな」という話をしたのですが、「あなたが志望する会社」がTOEICスコアをどの程度評価するかは、実際に受けてみないと正直わかりません。

例えば、「この人はTOEICのスコアはまあまあだけど、実務経験が全くないから採用は見送ろう」と考える翻訳会社も多くあるでしょう。これはその会社の考え方ですから、わたしたちにはどうすることもできません。企業としても、ある程度の即戦力を求めるのは自然なことです。

わたしも翻訳者への転職を決意した直後は、「そもそも未経験者を正社員として雇ってくれる会社があるのだろうか?」という点を最も不安に感じていました。こちらがいくら努力したところで、応募要件をクリアしていなければ履歴書を送ることさえできないのですから。

ですが、同時に「広い世の中、探せば1社くらいはあるんじゃないだろうか」という一ミリの希望も持っていました。検索キーワードは「翻訳 未経験 正社員」とかそんなありきたりなものだったと思いますが、とにかく表示されたサイトは全部見るくらいの気持ちで1日かけて、あらゆる転職サイトや企業ホームページを見て回りました。

その結果、「未経験者でも正社員に応募できて、ここで働きたいと思える会社」を1社見つけたのでした。

どうしても自分の理想に合う会社が見つからず、かつそれでも転職したいという気持ちが消えないのであれば妥協することも覚悟していましたが、まずは「運命の会社」があると信じてくまなく調べてみることをおすすめします。妥協してまたすぐ転職、というふうにはなりたくないですしね。

ちなみに、翻訳業務は「リサーチ」がメインの仕事だったりします。普段は「大体こんなことを言っているんだろうな」で済むことでも、仕事となると正確さを期さなくてはならないので逐一調べる必要があります。業務の予行演習だと思って、まずは転職先を徹底的にリサーチすることから始めてみてはいかがでしょうか。

志望先を1社に絞った

前の項目とも関連しますが、転職したいと心から思える会社を見つけて、その会社の採用試験に合格することにコミットすることが大切です。

友人に転職報告をした際、何社くらい受けてたの?と聞かれて「1社だけ」と答えたところ「ええ~!本当に?」と驚かれたのですが、わたしからすればこれこそが転職に成功できた要因だったと考えています。

恋愛で考えてみてほしいのですが、スペックが同じくらいの異性2人から同時にアプローチされたとき、

  1. あなたを落とすためにフルコミットしてくれる誠実な人
  2. いろんな女の子に思わせぶりな態度を取るチャラ男

のどちらを選びますか?という話なのです。やっぱり人は自分だけを見てくれる人を選びたくなるのではないでしょうか。

実際こんなことがありました。

最終面接が終わって帰るとき、人事課の方がエレベーターまで見送ってくれたのですが、並んで歩いているその僅かな時間に「他にもどこか受けていらっしゃるんですか?」と聞かれたのです。ここで「はい、他にも少し…」と答えたから即不合格!にはさすがにならないと思いますが、まったく意味のない質問を人事がわざわざするとも思えません。「ここだけしか受けてない」=「もし受かれば必ず入社します」と言っているようなものですから、採用する側としても合格を出しやすくなる、という可能性は否めないでしょう。

「きみと付き合いたいけど、無理かもしれないから他の子にもアプローチしてるんだ」という人と、「きみだけしか見えない!」という人、あなたはどちらにYESと言いますか?

また、単純に「時間がなかった」という理由もあります。特にフルタイムで働きながら転職活動をする場合、時間の確保に最も苦労するはずです。ただでさえ時間がない中で、色んな会社を受ければ受けるほど、1社あたりにかける準備時間が減ってしまいます。また、試験はたいてい平日の昼間に行われるはずですから、その日は有給を取得する必要があります。並行して数社受けるとなると、短期間にかなりの日数の休暇を取らなければなりません。わたしの場合、当時は忙しい部署にいたので、複数社を受けるのは現実的ではなかったように思います。

逆に、1つ1つの会社に十分な準備をするだけの時間を確保できる範囲であれば、(本命の練習という意味も込めて)いくつかの会社に応募してもよいかもしれません。

「これで落ちたらしょうがない」という状況を作った

わたしは基本的に転職エージェントを介さずに転職活動を行いました。しかし、翻訳業界のことに対して完全に無知だったため、少しでも生きた情報を得られればとの思いである転職サービス会社の無料相談会には参加しました。

担当してくれた方は、「無料なのに申し訳ないな…」と思うくらい親身になって話をしてくださり、また業界の中途採用事情も詳しく教えていただけたので、本当に参加してよかったなと今も感謝しています。

ただ、そこでは「正社員だけでなく、派遣も選択肢に入れてみては?」「(第一志望の会社を伝えたところ)良い会社だとは思いますが、相当難しいと思いますよ」などなど、わりと厳しい現実を柔らかい口調で突きつけていただきました(笑)

でも、「無理です」とは言われなかったことをプラス材料ととらえ、「1%でも可能性があるならやるだけやってみよう」と腹が決まりました。

そこから、SPIの勉強、翻訳の勉強(と言っても本を読むくらいですが)、面接対策(履歴書&職務経歴書、質疑応答リストの作成)の計画を立てて実行に移していきました。平日はどうしても残業せざるを得なかったのでほとんど土日しかありませんでしたが、「やれるだけのことはやって、落ちたときのことはそのとき考えよう」という気持ちでした。

書類選考から最終面接の結果が出るまで約1ヶ月という短期決戦でしたが、限られた時間の中でやれることを全部やれば、なにも後悔することはありません。

決して十分とは言えませんが、自分にできることはやったという気持ちで試験に臨めたことは結果に大きくプラスに働いたと考えています。

運と縁

これを言っては元も子もないかもしれませんが、やはり運と縁の要素は大きいです。

自分が応募したときに、他にどんな応募者がいるのか(自分よりも優秀な人がいたら難しいですよね)、どれくらいの人数を募集しているのか、どのくらいの年齢までが対象なのか、などは自らコントロールすることができません。まさに運頼みです。

また、これも恋愛に似ていますが、結局のところ、縁次第でもあります。面接官が「この人を採りたい」と思ってくれるように完全にコントロールすることはできませんし、会社の雰囲気に合う・合わないという要素もあるでしょう。就活生が面接に落ちると「自分が全否定された気持ちになる」というのをよく聞きますが、そんなのばかげています。初めて会った面接官が、それも30分程度話をしただけで、あなたのすべてを評価できるはずがないのですから。面接では、「評価する側と評価される側」と意識することなく「人と人」として普通に話をしましょう。そのほうがきっとうまくいきます。

ただし、注意するべき点がひとつあります。それは、落ちた原因が”運と縁”になるのは、あなたが「できるだけのことをやったとき」だけだということです。

筆記試験でも、面接試験でも、当日に「これで落ちたら仕方ない」と思えるからこそ、「運がなかったんだな」「縁がなかったんだな」と潔く諦めることができるのです。

準備を怠ってしまった…という気持ちで選考を終えて、もし落ちてしまったら、その原因が「準備不足」なのか「運や縁がなかったから」なのか分からず、中々気持ちを切り替えるのが難しくなってしまいます。わたしは過去にそういう経験をしたことがあるので、今回はそうならないようにと考えていました。

以上をまとめると、わたしが思う転職活動のポイントは以下のとおりです。

  • アピールポイントがあること(それが評価されるかどうかは相手が決めることなので、自分が「大したことない」と思っているネタでも問題ない)
  • できるだけ情報を集めること
  • 「本当に行きたい会社」にターゲットを絞ること(むやみに応募しない)
  • 計画を立てて自分にできるだけの準備をすること
  • 結果は結局運と縁に左右されるもの。人事を尽くして結果が出なければ「この会社に転職しないほうがわたしは幸せになれるということなのだな。それに気付けて良かった」と前向きに理解すること

たとえ翻訳未経験でも、それだけで諦めてしまうのは勿体ないです。行動すれば何かしらの結果が出て、自分の進むべき道が見えてきます。翻訳の仕事に興味がある方は、ぜひ積極的にチャレンジしてみることをおすすめします。